2023.07.19 (Wed)
【はじめに】
今、全国的な課題として、地方自治の最前線である町内会(自治会)の高齢化が進行している。京都市においても、役員の「なり手不足」が各町内で慢性的な課題となり、それが3年前からのコロナ禍でいっそう深刻になっている。地域活動に汗を流す方々の多くが、町内会加入率の低下や脱会数の急増を憂え、このままでは機能不全に陥ってしまいかねないとの危機感を表明されている。大げさな言い方で恐縮だが、まさに存亡の危機にあるといっても過言ではない。
地域コミュニティが形骸化することにより、地域から活気が失われ、世代間の断絶や社会的孤立が進むことが憂慮される。防犯や防災の観点からも、町内会の役割は極めて大きいと言えるのではないだろうか。この問題意識で、町内会の活性化への1つとして、デジタル化の可能性を論じてみたい。
【町内会アプリ】
令和3年度、私は居住している町内会の会長に選出された。200世帯を超える大きな町内会であり、若輩の自分には重責すぎると固辞し続けていたのだが、町内会の未来に危機感を持つ先輩方の熱意にほだされ、お引き受けせざるをえなかったのである。
危機感を共有する複数の会長経験者の方々と協力し合って、町内会再編と役員選出の改革にも着手し、臨時総会や地区別説明会などを積み重ねていった中で、「町内会の情報を共有することと伝達のスピード化のために、ネットを活用するべき」との意見が出された。そこで、HPやブログなどを検討したところ、管理人的な立場の1人に集中するのは負担が大きく「継続性」に難点があるため、他都市で成功している汎用性アプリを探そうということになり、「いちのいち」というアプリを導入することになった。

正式名称を「町会・自治会SNSいちのいち」という本アプリは、小田急電鉄が関東地域で展開しており、特に神奈川県秦野市では普及が進んで多くの住民が活用して成果が上がっているとのこと。わが町内として、小田急の担当者に京都市まで来てもらったり、ZOOM会議を何度か実施するなど、導入と運用のために、かなりの時間と労力がかかったが、2年以上経過した今は100人を超える会員に活用してもらっている。
メリットは、回覧板や日程表をスマホ画面で閲覧できることであり、紙チラシならば隣家に回したら手元に残らないのが、このアプリならデータでいつでも見ることができる。共働き家庭では回覧が自分のせいで遅れることが負担に思ってしまって、それが町内会活動に参画しにくい原因になっているケースがあるので、スマホに抵抗のない若い世代にプラスになると思われる。
それに加えて、私の町内では防災訓練など地域行事の報告を写真入りでアップしたり、市民しんぶん電子版やその他の興味深い情報を京都市HPからピックアップして紹介している。特に感謝されたのが、町内を流れる川の水位を台風時に画像で提供したことである。
グレードアップしたら、防災への注意喚起や災害時の避難誘導および安否確認などでも活用でき、子育てママ友や高齢者の趣味サークルでのコミュニケーションツールとして応用できるので、大きく可能性が広がるのではないだろうか。
【今後の課題への提言】
京都市は、令和5年3月に小田急電鉄と「持続可能な地域コミュニティの推進に係る連携協定」を締結した。「いちのいち」の普及に力を入れ、地域での導入や活用を支援するために、様々にタイアップするとの内容である。

それを受けて、京都市HPでも段階を踏まえた広報が積み重ねられていったが、中でも5月には、北区・下京区・西京区・伏見区の4行政区で説明会が開かれ、申込枠いっぱいという大きな反響があった。私は伏見区役所で傍聴したが、質疑応答は多岐にわたり、その関心の大きさを改めて実感すると共に、「このままではまずい」との危機感を抱いたというのが正直な感想であった。
というのは、学区や町内会の責任者の方のほとんどがシルバー世代であり、スマホ操作自体に不慣れである方が少なくないことから、説明に対する理解力や咀嚼力に格差があり、多くの方が「ハードルが高い」と感じてしまうのではないか、と心配したのである。
実際、説明会がいったん終了し講師が別会場に移動された後に、何人かの顔見知りの方と雑談したのだが、口をそろえて「難しい」「自信がない」と言っておられた。同時に「導入したら余計に負担が増えるのではないか」との懸念も表明されていた。その点は1年以上実際に活用している私自身も痛感しているところであり、今後の大きな課題であると言わなければならない。
このままでは、導入前の検討段階で断念してしまう団体が続出してしまうのではないだろうか。現に7月に「オンラインの活用講座」が開かれたが、参加者の数は5月の説明会よりもかなり少ない状況であった。そこで、京都市の担当者に以下の具体的な提言をしたい。
第一に、「導入支援に力を入れる」ことである。アプリを開発した小田急担当者から直接に市民へ説明するやり方ではなく、その前に、京都市の複数の担当者に徹底して研修を行なって小田急担当者と同じレベルまでに仕上げ、市の担当者が希望する市民への伴走型支援をきめ細かく粘り強く行なって頂きたい。
第二に、「運用面の負担感を軽減」することである。具体的には、市(行政区)から各学区経由で町内に配布される大量かつ煩雑な回覧情報を、紙ベースに加えてPDFとして送信する手法を導入する。それによって、例えば100世帯の町内のうち「いちのいち」で画面閲覧を希望する町内会員が40世帯となれば、そこには回す必要が無いので、実際に必要な紙チラシは60枚で済む。チラシの仕分けや配達の枚数が大幅に軽減され、町内で回覧する時間も大幅に速くなるのである。
第三に、「導入後のバックアップを充実」することである。一番目に言及したように、市の担当者のレベルを小田急と同程度に引き上げれば、町内や学区の担当者からの質問にリアルタイムで答えられるし、区役所に来てもらうだけでなく、学区の施設や町内の会館等に足を運んで、詳しい説明やトラブル対応も可能となるのではないだろうか。
以上3点を提言させて頂く。大変ではあるが、協定を締結した限りは、中途半端でなく徹底的に手を打っていくべきなので、ぜひ前向きに検討してもらいたい。長い文章を最後まで読んで下さり感謝申し上げます。
今、全国的な課題として、地方自治の最前線である町内会(自治会)の高齢化が進行している。京都市においても、役員の「なり手不足」が各町内で慢性的な課題となり、それが3年前からのコロナ禍でいっそう深刻になっている。地域活動に汗を流す方々の多くが、町内会加入率の低下や脱会数の急増を憂え、このままでは機能不全に陥ってしまいかねないとの危機感を表明されている。大げさな言い方で恐縮だが、まさに存亡の危機にあるといっても過言ではない。
地域コミュニティが形骸化することにより、地域から活気が失われ、世代間の断絶や社会的孤立が進むことが憂慮される。防犯や防災の観点からも、町内会の役割は極めて大きいと言えるのではないだろうか。この問題意識で、町内会の活性化への1つとして、デジタル化の可能性を論じてみたい。
【町内会アプリ】
令和3年度、私は居住している町内会の会長に選出された。200世帯を超える大きな町内会であり、若輩の自分には重責すぎると固辞し続けていたのだが、町内会の未来に危機感を持つ先輩方の熱意にほだされ、お引き受けせざるをえなかったのである。
危機感を共有する複数の会長経験者の方々と協力し合って、町内会再編と役員選出の改革にも着手し、臨時総会や地区別説明会などを積み重ねていった中で、「町内会の情報を共有することと伝達のスピード化のために、ネットを活用するべき」との意見が出された。そこで、HPやブログなどを検討したところ、管理人的な立場の1人に集中するのは負担が大きく「継続性」に難点があるため、他都市で成功している汎用性アプリを探そうということになり、「いちのいち」というアプリを導入することになった。

正式名称を「町会・自治会SNSいちのいち」という本アプリは、小田急電鉄が関東地域で展開しており、特に神奈川県秦野市では普及が進んで多くの住民が活用して成果が上がっているとのこと。わが町内として、小田急の担当者に京都市まで来てもらったり、ZOOM会議を何度か実施するなど、導入と運用のために、かなりの時間と労力がかかったが、2年以上経過した今は100人を超える会員に活用してもらっている。
メリットは、回覧板や日程表をスマホ画面で閲覧できることであり、紙チラシならば隣家に回したら手元に残らないのが、このアプリならデータでいつでも見ることができる。共働き家庭では回覧が自分のせいで遅れることが負担に思ってしまって、それが町内会活動に参画しにくい原因になっているケースがあるので、スマホに抵抗のない若い世代にプラスになると思われる。
それに加えて、私の町内では防災訓練など地域行事の報告を写真入りでアップしたり、市民しんぶん電子版やその他の興味深い情報を京都市HPからピックアップして紹介している。特に感謝されたのが、町内を流れる川の水位を台風時に画像で提供したことである。
グレードアップしたら、防災への注意喚起や災害時の避難誘導および安否確認などでも活用でき、子育てママ友や高齢者の趣味サークルでのコミュニケーションツールとして応用できるので、大きく可能性が広がるのではないだろうか。
【今後の課題への提言】
京都市は、令和5年3月に小田急電鉄と「持続可能な地域コミュニティの推進に係る連携協定」を締結した。「いちのいち」の普及に力を入れ、地域での導入や活用を支援するために、様々にタイアップするとの内容である。

それを受けて、京都市HPでも段階を踏まえた広報が積み重ねられていったが、中でも5月には、北区・下京区・西京区・伏見区の4行政区で説明会が開かれ、申込枠いっぱいという大きな反響があった。私は伏見区役所で傍聴したが、質疑応答は多岐にわたり、その関心の大きさを改めて実感すると共に、「このままではまずい」との危機感を抱いたというのが正直な感想であった。
というのは、学区や町内会の責任者の方のほとんどがシルバー世代であり、スマホ操作自体に不慣れである方が少なくないことから、説明に対する理解力や咀嚼力に格差があり、多くの方が「ハードルが高い」と感じてしまうのではないか、と心配したのである。
実際、説明会がいったん終了し講師が別会場に移動された後に、何人かの顔見知りの方と雑談したのだが、口をそろえて「難しい」「自信がない」と言っておられた。同時に「導入したら余計に負担が増えるのではないか」との懸念も表明されていた。その点は1年以上実際に活用している私自身も痛感しているところであり、今後の大きな課題であると言わなければならない。
このままでは、導入前の検討段階で断念してしまう団体が続出してしまうのではないだろうか。現に7月に「オンラインの活用講座」が開かれたが、参加者の数は5月の説明会よりもかなり少ない状況であった。そこで、京都市の担当者に以下の具体的な提言をしたい。
第一に、「導入支援に力を入れる」ことである。アプリを開発した小田急担当者から直接に市民へ説明するやり方ではなく、その前に、京都市の複数の担当者に徹底して研修を行なって小田急担当者と同じレベルまでに仕上げ、市の担当者が希望する市民への伴走型支援をきめ細かく粘り強く行なって頂きたい。
第二に、「運用面の負担感を軽減」することである。具体的には、市(行政区)から各学区経由で町内に配布される大量かつ煩雑な回覧情報を、紙ベースに加えてPDFとして送信する手法を導入する。それによって、例えば100世帯の町内のうち「いちのいち」で画面閲覧を希望する町内会員が40世帯となれば、そこには回す必要が無いので、実際に必要な紙チラシは60枚で済む。チラシの仕分けや配達の枚数が大幅に軽減され、町内で回覧する時間も大幅に速くなるのである。
第三に、「導入後のバックアップを充実」することである。一番目に言及したように、市の担当者のレベルを小田急と同程度に引き上げれば、町内や学区の担当者からの質問にリアルタイムで答えられるし、区役所に来てもらうだけでなく、学区の施設や町内の会館等に足を運んで、詳しい説明やトラブル対応も可能となるのではないだろうか。
以上3点を提言させて頂く。大変ではあるが、協定を締結した限りは、中途半端でなく徹底的に手を打っていくべきなので、ぜひ前向きに検討してもらいたい。長い文章を最後まで読んで下さり感謝申し上げます。