MyOpinion の記事一覧
- 2022/08/21 : 自転車政策の充実にむけて
- 2022/08/16 : 京都市財政危機克服のために
- 2021/02/25 : 2021年2月市会本会議代表質疑
- 2021/01/16 : 「高齢者の足の確保」問題について
- 2021/01/04 : 倭国大王列伝(3)
2022.08.21 (Sun)

【自転車政策の重要性】
京都市は、平成12年3月に「京都市自転車総合計画」を、22年3月に「改訂京都市自転車総合計画」を策定するとともに、同年11月には「京都市自転車安心安全条例」を制定して、市民ぐるみの取り組みを加速する中、27年には「京都・新自転車計画」を策定し、市民や関係機関と連携した総合的な自転車政策を段階的に前進させてきた。その結果、自転車の係る交通事故はピーク時の3分の1以下に減少するとともに、長年の大きな問題であった放置自転車は、なんとピーク時の200分の1以下に減少するなど、自転車の利用環境は大きく向上してきた。
今、環境にやさしく健康長寿にも資する自転車は、ウィズコロナ・ポストコロナ時代における「新しい生活スタイル」にも対応する乗り物として「公共交通を補完する役割」が期待され、持続可能な社会の実現を目指して国連が定めた取組目標「SDGs」の達成や、あらゆる危機に粘り強くしなやかに対応する「レジリエンス」の構築にも貢献するための不可欠なツールとして注目を集めている。
一方で、少子高齢化が進行し若い世代の方が転出する、いわゆる人口流出が深刻な課題として懸念され、持続可能な都市への政策推進が模索されている。私はこのような時だからこそ、多角的な「子育て支援策」(待機児童対策・先進的な学校教育・安心安全なまちづくり・魅力ある文化芸術の振興・アニメ等のコンテンツ産業充実など)の中に『自転車政策』を位置付け、子育て世代にとって他都市と比べて突出した“魅力あるまち”へ成長するための重要なテーマとして、今まで以上に力を入れるべきと、声を大に訴えたい。その一環として、具体的な提言を行なうものである。
【京都市自転車総合計画2025】
令和3年10月、門川市長は「京都市自転車総合計画2025」(写真)を策定し、これまでの成果を継承・充実強化させながら、安心・安全な自転車利用環境を前進する中で、自転車を通じて豊かな生活を送ることができる「自転車共生都市・京都」の実現を目指すことを明確化した。議会において各会派の議員が熱心に議論する中、私も何度も本会議や特別委員会などの場で発言を重ねていった。
計画策定のために尽力した「京都市自転車政策審議会」には、大学教授などの有識者や市民公募委員に加え、PTAや女性会、商店連盟、学生支援センターなど幅広い世代の代表が委員となっておられたが、なかでも自転車関係者のラインナップが目をみはった。販売事業者団体やサイクリング協会だけでなく、自転車利用環境向上会議全国委員会の三国成子会長(地球の友・金沢)と、著名なツーキニスト(自転車通勤者)疋田智さん(NPO法人自転車活用推進研究会理事)が参画して、定期的に京都までお見えになっていたのである。
他にも、自転車利用環境向上会議を運営し自転車活用推進研究会などで研究成果を発表する学者や事業者の方など、自転車政策のトップランナーが名を連ねており、他都市の議員さんや自治体関係者から驚かれ、羨ましがられていたことを、誇らしく報告させていただきたい。逆に言えば、千年の都であり世界に冠たる観光都市である京都市に対して、全国の自転車政策に携わる方々から、文字通り「熱い思い」が寄せられている証左に他ならない。市長をはじめ京都市の関係者は(私を含め)、その事実を深く心に刻んで自覚した上で、計画に盛り込まれた政策を実行していくべきではないだろうか。
「京都市自転車総合計画2025」のPDFが京都市HPにアップされている。表紙を含め30頁の分量だが、関心のある方はコチラをクリックしてお読みいただきたい。
【4つの提言】
私は、京都市政初の“議員立法”である自転車安心安全条例の提案説明を本会議で行なったほか、付託された常任委員会の質疑で答弁に立った。こうした経験を着目され、東京などで開催されたセミナーで何度か講演し、パネラーとして各地に招待されたほか、雑誌に寄稿したり取材を受けたりした。現在はコロナで活動できていないが、「全国自転車議員ネットワーク」という議連の理事の任にも就いている。
また、各年の本会議代表質問や特別委員会質疑でも、自転車政策を取り上げて論じており、本ブログの「MyOpinion」で摘録を掲載しているので、関心ある方はスクロールしてお読みいただきたい。今回の提言は、これらの質疑での議論や市の計画を踏まえつつも、京都市が直面する財政危機とコロナ禍を真正面から向き合う意味で、より現在に実状に即した重要な4つの視点に絞り込んだ。下記に列記する。
まず第1に、「自転車安全教育」は縮小してはならないと訴えたい。京都市独自の自転車安全教育プログラムに基づき、幼児・小学生・中学生・高校生・大学生(留学生を含む)・社会人・高齢者を対象とした各世代のライフステージに合わせた自転車教育は、最新の成果をどん欲に導入してきた積み重ねがあり、先の自転車利用環境向上会議全国大会でも成功事例として数年連続で紹介されている。財政危機によってハード面の緊縮はある程度やむを得ないが、ソフト面は大宮交通公園に新設されたサイクルセンターでの取り組みと中学生対象の「見て分かる!自転車安全教室」は継続していくべきだ。子どもたちはあっという間に大きくなり卒業してしまうからである。
第2に、「ルールマナー啓発」を、若い世代に注力してはどうかと提起したい。高校生や大学生は、通学やアルバイトの往復などで他の世代よりも自転車を使う頻度が多い反面、時間がない焦りや若さへの過信などの未熟さで、自分が歩行者や自動車に「脅威」を与えている自覚に乏しい。自転車マナーを最も身につけてもらいたい存在であり、「子どもたちやお年寄りにやさしい運転することがカッコイイ!」という価値観を浸透するようなシャレた啓発を期待したい。若い社会人の中でも自転車通勤(ツーキニスト)が増えているので、幅広い世代に効果が見込めると思われる。
第3に、「走行環境整備」においては、新たな視点として「安全向上」に着目する必要があるのではないか。ハード面の整備は予算が高額のため、当初の計画と比べて縮小することは、ある程度受け入れざるを得ないが、だからと言って、事故を未然に防ぐ手立てへの取り組みは後手を踏んではならない。具体的には、歩道から降りて車道を走行する自転車が転倒する危険が無いようにする「グレーチング」のすべり止めのため、最新技法を研究するべきと提案させていただく。
最後の4点目は、「局横断の体制整備」によって的確な施策展開を促進するべきという点である。多世代の自転車教育も若い世代のマナー啓発も、具体的に推進する部署は多岐にわたる。私が本会議代表質問で取り上げた「自転車観光」や「シェアサイクル」も然りである。現在の所管局である建設局が他局の施策をチェックし指示することは、お互いがギクシャクしてしまわないかと懸念する。他局にまたがる政策の進捗を見極め、今後の展開を取りまとめる「司令塔」的なポジションを設置してはどうだろうか。
公共や民間に限らず、すべての業務計画では「推進体制」と「評価・点検のフォローアップ」が最も重要であるが、昨年策定の「京都市自転車総合計画2025」では、たった1頁での言及にとどまっており、個人的には心配感が拭えない。その箇所には「進捗状況については,京都市自転車政策審議会に報告し,評価・点検等を行うことにより,計画の着実な推進を図ります」と記載されているが、だからこそ責任の所在を明確にするべきであり、そのための「体制整備」を検討することが重要と考える。
以上、京都市の自転車政策のさらなる充実に向けた提言を4点取りまとめた。それ以外にもたくさんの具体的な政策が計画に盛り込まれており、4点以外は軽くしても良いというつもりは全くない。ただ、「選択と集中」は今のこの時にこそ求められていると受け止め、賢明に判断した上で、懸命に実行していく事が大事である。どこまでも現場感覚を忘れず、市民の立場に寄り添った想像力を傾け、新たな価値を創造してまいりたい。
2022.08.16 (Tue)

【財政危機の実状】
2022年夏、京都市の財政危機が注目を集めている。なんとしても克服しなければならない。それぞれの政党・会派は、主義主張の違いによる不毛な対立を乗りこえて、京都市の未来のために議論を尽くすべきである。この重要な点について私見を論じていきたい。
京都市が財政危機に瀕しているとのニュースは、多くの人から意外性を持って受け止められている。観光世界一を誇り、多彩な伝統文化に恵まれ、大学の集積により人材が集まり、誰もが知る有名企業が立地している、などなどの評価が定着しており、その京都市が財政破綻の危機に瀕しているという事実は、「世界が憧れる」イメージとかけ離れていると言ってよい。
しかしながら、この危機的状況は一朝一夕に始まったものではなく、何十年も前からの構造的な要因によってもたらされたものである。高齢化が進行する中、景観を守るため高さ規制をしたことによる固定資産税の低迷に加え、中小零細企業が99%を超える地域特性が大きな要因であり、徴税率を100%近くまで高めるなどの努力を重ねているものの、ここ数年のコロナ禍で大きなダメージを受けてしまった。
20年以上前から「財政非常事態宣言」を出していたが、伸び悩む収入に比べ、福祉的経費の増大など支出が膨れ上がり、いびつな収支バランスを是正する一環として、禁じ手と言われる「公債償還基金」の取り崩しを繰り返して財源を確保してきた。しかし、このままでは基金が底をつくことが目に見えている。今までのような「先送り」は許されない状況であることは間違いない。
これ以上、若者や子どもたち「将来世代」にツケを押し付けることは不可能であり、今の大人たちが力を合わせて、勇気をもって改革に乗り出していく必要がある。公明党は、京都市の行財政改革は避けて通れない最重要課題であるとの問題意識で、建設的な政策提言を重ねてきた。
【行財政改革計画の評価】
令和3年8月、京都市が策定した「行財政改革計画」は、識者や市民の代表らで構成された審議会の答申を踏まえており、公明党の提言も数多く取り入れられていることから、一定の評価をするものである。特に、「民間活力の活用」と「デジタル化の推進」はムダ削減とサービス向上につながるので、スピーディな工程管理が求められる。同時に、補助金見直しやイベント縮小および受益者負担の適正化など「痛みを伴う」改革は慎重かつ丁寧に進めるべきである。
計画の詳細は京都市HPでPDFが公開されている。70頁の分量だが極めて重要な内容であるので、コチラをクリックしてご参照されたい。
これら計画の遂行に当たっては、現状をきめ細かく検証し、見直しや改善を積み重ねなければならないのは当然である。硬直した意識を変革し、柔軟な発想でタイムリーな施策を推進し続けなければならない。―これが公明党の変わらぬスタンスである。
これに対し、門川市長に反対する野党勢力は、「失政である」と声高に非難している。維新や京都党という第三極の勢力は、「身を切る改革」を旗印にして、各種施策の削減へ大鉈(おおなた)を振るうべきと論じているが、幅広い分野の各世代の方々の「痛み」に寄り添う姿勢は見えてこない。
もう一方の共産党は、各制度の「見直し」「改善」に反対し、行財政改革計画の撤回を求めている。段階を踏まえて策定した計画に対して、突っ込んだ検証をすることなく「撤回」を主張するのは、財政破綻を回避する責任を放棄していると言わざるを得ない。
第三極と共産党の主張は真っ向から反発している。極端と極端に走る議論では徒らに分断するばかりで、事態は膠着状態のまま前に進まない。だからこそ、そのど真ん中に立つ公明党は自民党と連携を深め、合意形成への架け橋となって、具体的な施策を的確に進めているのである。
【共産党の主張に疑問】
今年の上半期、共産党は議会質疑等で「京都市の財政破綻」は誇大宣伝であり、改革計画を「市民を脅し負担を押し付けるキャンペーンだ」と非難した。はたしてそうだろうか。以下に論じていきたい。
1.令和3年2月予算で「275億円の収入増」があったことを踏まえ、共産党は「財政破綻するとした行財政改革の前提が崩れている」と言っている。しかしその「収入増」は今回限りの『特例』(国の緊急地方財政対策で地方交付税が増えたことが要因)であり、市税収入が増えれば交付税は減る仕組みになっているため、4年度以降の大幅な増額は容易ではない。改革を行なわなければ特別な財源対策からは脱却できない実態がある。
2.2月の予算時の「収入増分」を基金借り入れへの返済に充てたことを批判し、共産党は市民生活の支援に使うべきと主張しているが、一時的な財源をあてにしたところで継続的な施策にはならない。持続可能な支援のためには、当面の基金の枯渇を回避するべきである。その意味から、将来世代への負担を軽減することが重要と判断した市の姿勢は評価できる。
3.基金への返済を重視したもう1つの理由は、会計間の移動とはいえ「利子」が発生(昨年度決算で1,746万円)しているので、今回の増収分を基金に積み増す方が今後につながっていくからである。
以上の点から、厳しい財政危機を克服するために、京都市が基金借り入れへの返済を優先し、徹底した行財政改革と将来を見据えた成長戦略を展開する方針を立てていることは極めて妥当であり、共産党の主張は的外れではないかと指摘したい。
ところで、共産党は「市民サービスを切り捨て負担増を強いるのではなく、厳しい市民生活を支援すべき」と主張している。それを真に受けると、「政府や自治体は何もやっていない」という不平不満が刺激されるので注意が必要だ。なぜなら、政府は野党から言われるまでもなく、コロナ禍を重く受け止め、具体的施策を連続して打っているからである。
具体的には、緊急小口資金貸付・生活支援金・住宅確保給付金・生活困窮者自立支援金・雇用調整助成金・家賃支援給付金・事業再構築補助金・事業復活支援金などであり、また京都市も、これらと連動して予算を確保し、中小企業総合支援補助金・就労継続支援助成金・文化芸術活動等奨励金・医療機関への支え合い基金などを実施してきた。「何もできていない」というイメージに幻惑されては本質を見誤る。大事なことは、具体的な施策をいち早く着手した上で、現場の声を受け止めて見直しや改善を積み重ねていくべきではないだろうか。
【持続可能な財政へ】
京都市財政の健全化を図るうえで、現在の諸制度のうち、発足当時から大きくコストが膨らんで財政を圧迫しているもの(例えば敬老乗車証や家賃減免など)については、いっさい見直してはならないと主張するだけでは「スリム化」は前に進まず、やがて制度自体が破綻を余儀なくされてしまう。そうならないためには、勇気をもって見直しに着手し、持続可能なあり方に改善していく必要がある。
ここで、分かりやすく「例え話」で説明したい。・・・・・・ある食堂が高齢者向け定食を500円で提供していたが、高齢化の進展で需要が増大すると同時に、食材の高騰や人件費の増加などで仕入れと売り上げのバランスが崩れ、最終的には食堂自体が立ち行かなくなってしまう、という危機に直面しているとする。この場合、一時的なキャンペーンで値引きするなどの工夫をしたとしても、それが終わると再び危機に直面する。店が潰れないため(持続可能な経営に転換するため)には、やむを得ず「500円定食」を700円に値上げさせてほしいと言っているようなものである。
公明党は、この例えで言えば、値上げはやむを得ないが「600円」にできないか(あるいは値上げ時期を延期できないか)と提案している。それに加えて、「高齢者向け定食の対象基準を見直す」「ライスのお替りを有料にする」「水やおしぼりをセルフにする」などの実用的かつ建設的な提言を試みていると理解していただきたい。(あくまで食堂のたとえ話であるが・・・)
要するに、持続可能な財政に転換するために現状の制度を改善することは、一時的な抵抗感があったとしても、どこかで誰かがやらなければならない、それが今なのである。そういう理屈は頭ではわかっていても感情では受け入れにくいものであるが、このような感情的反発が政治利用され不毛な足の引っ張り合いに陥った時、シワ寄せを押し付けられ迷惑を受けるのはいつも庶民ではないだろうか。
公明党議員団は、市長に対して「見える化」と「透明化」をより進めていくべきと口を酸っぱく提言している。1人でも多くの市民に改革の重要性を理解していただき、「何とかして乗り越えていこう」との思いを共有して、実際の意味で「市民協働」を進めていくために不可欠だからである。説明責任を果たして初めて、市民参加の民主市政が本格的に始動すると確信し、市長と議会による「二元代表制」を機能させてまいりたい。
その上で、「国との連携」を今まで以上に拡充する必要がある。公明党は参院選に向けて発表したマニフェストで、「経済の成長と雇用・所得の拡大」「誰もが安心して暮らせる福祉社会」を掲げた。「平和外交」「防災立国」「デジタルで拓く地域社会」「感染症に強い日本」への施策も明確に示している。自公の安定政権で矢継ぎ早に進める1つ1つの政策と連動して、現場の最前線を活性化することが、京都市の財政立て直しに直結すると確信する。
「見える化」を進めて市民と協働し、「国との連携」を拡充して先手を打つ。この2点を基調としてブレずに、前へ前へと進み続けることこそ、財政危機克服の王道ではないだろうか。
「さあ、出発しよう! 悪戦苦闘を突き抜けて! 決められた決勝点は取り消すことができないのだ」(ホイットマン『草の葉』)
2021.02.25 (Thu)
令和3年2月25日、私・吉田たかおは京都市会本会議で公明党議員団を代表し、門川市長への質疑に立ちました。

新型コロナとの未曽有に長期戦にあって、追及や糾弾に終始しない建設的な質疑を展開し、前向きな答弁を勝ち取ることが出来ました。下記に質問原稿と答弁(主旨)を掲載させて頂きます。
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伏見区選出の吉田孝雄です。公明党京都市会議員団を代表し、大道義知・曽我修両先輩議員に続いて質疑をいたします。市長並びに理事者におかれましては、誠意あるご答弁をお願いいたします。
まず、新型コロナに感染した方やご家族に心よりお見舞い申し上げます。また、医療従事者や介護従事者の方をはじめ、総てのエッセンシャルワーカーの皆さんに敬意を表し、感謝申し上げます。
【人間中心の新しい社会「Society5.0」について】
最初に、人間中心の新しい社会「Society5.0」について提案いたします。これは、公明党京都市会議員団が毎年発表している政策提言の本年度のテーマでございまして、「新型コロナウイルス感染症を乗り越え、京都市の更なる発展を目指して」とのサブタイトルを付して、今月17日に門川市長に提出いたしました。
「Society 5.0」とは、平成28年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」で我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたコンセプトであり、現実の空間とクラウドなどのサイバー空間を高度に融合させたシステムによって、経済の発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を実現するというものです。
アメリカの未来学者アルビン・トフラーは、『第三の波』で人類の歴史は3つの技術革新の波によって発展したと解説しました。約1万5千年前の農業革命によって、第1の狩猟社会から第2の農耕社会へ、19世紀の産業革命によって第3の工業社会へ、そして戦後の脱産業化の第3の波による情報革命が高度情報化社会に発展させたというものです。
そして、21世紀。我が国が直面する様々な課題を克服する「新たな価値の創造」が時代の閉塞感を打ち破るキーワードであると位置づけ、人間中心の社会「Society5.0」のグランドデザインが打ち出されました。
コロナ禍で新しい生活様式への転換が模索される中、誰ひとり取り残さないSDGsの理念を基調とした経済や社会活動が重要となっています。人工知能やIoT、ビックデータなどをあらゆる産業や社会に取り入れることによって実現する未来社会では、AIの活用により必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動運転など最先端の技術で、少子高齢化、地方の過疎化などの課題を解決することにつながると考えられており、1人1人が希望を持って活躍し、世代を超えて互いに尊重し合あえる共生社会が展望されるのです。
私たち公明党議員団は、総ての市民が豊かな暮らしを実現する人間中心の新しい社会「Society5.0」の実現に向けた政策を提言するべく、国の基本計画や成長戦略、世界の先進事例を学んだほか、大学教授とのオンライン会議や若い研究者たちとのディスカッションを重ねてまいりました。
また、9月市会と11月市会で川嶋議員と平山議員がデジタル化推進を求める質疑を展開。デジタル化戦略監をトップとした全庁横断のプロジェクトチームの発足と職員採用などの体制整備など、着実な前進を後押ししてきました。
今回の提言は大きく4点あります。提言1では、誰ひとり取り残さない「Society5.0」のため情報弱者やデジタル弱者と言われる方への視点を忘れない意識改革と人材育成を、提言2では市民の暮らしに資するため、情報インフラの整備や申請主義から脱却するデジタル化の拡充、最新技術を駆使した高齢者支援や医療サービス、災害対策向上などを提案しました。
提言3は京都市の歴史的・文化的価値を未来に引き継ぐためのデータベース化とオープンデータ化の推進を提起し、提言4は京都の強みを活かした産官学の人材と技術のシェアリング、業種の垣根を超えた中小企業間のマッチングなどの具体策を提案しました。
財政危機と新型コロナという2つの極めて重大な危機に直面している今こそ、未来に希望の持てるビジョンに裏付けられた政策を力強く進め、市民の皆様との協働を加速していかなければなりません。今回のSociety5.0の実現に向けた提言で提案した政策を取り入れて、新たな価値を創造する持続可能なまちづくりに邁進して頂きたい。市長のご決意をお聞かせください。
≪門川市長答弁≫(主旨)
頂いた政策提言をすべて読み、大いに賛同した。今後10年を決する基本計画にも「Society5.0」を盛り込んでいる。具体的提言を1つ1つ政策に活かしてまいりたい。
【新型コロナウイルス感染症に関する法整備】
次に、新型コロナウイルス感染症に関する法整備についてお聞きします。2月3日、いわゆる改正特措法などコロナ関連法が可決成立しました。新型コロナ対策の実効性を高めるため、緊急事態宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を新設すると共に、営業時間短縮の命令や入院措置に応じない場合に過料を科す内容です。
公明党は、時短を求められる事業者に財政上の支援を義務付けた点と、国と自治体間での情報連携の義務化や宿泊・自宅療養の法的根拠を明確にしたことを評価し賛成しました。
苦渋の決断を余儀なくされる飲食店や周辺の事業者から深刻な声が寄せられ、市民の反応も賛否両論に分れています。私は、コロナとの戦いの正念場を迎えた今、責任の追及や糾弾に終始するのではなく、心を合わせて励まし合い、知恵を出し合っていく姿勢が大事だと思います。
この1年間、多くの自治体で、行政と市民、事業者がお互いの責務を果たし、感染拡大防止に協力する条例が制定されています。一般財団法人地方自治研究機構によると、新型コロナウイルス感染症に関する条例は本年2月9日時点で 東京都や千葉県、愛知県など都県が12条例、名古屋市と千葉市、2つの政令市を含む40の市町村条例、合わせて52条例が制定されました。
海水浴場のマナー向上を呼び掛ける神奈川県逗子市、観光客に協力を求める京丹後市や沖縄県石垣市など、地域の実情を反映した条例もありますが、ほとんどが市民ぐるみで協力する感染拡大防止を規定すると共に、感染症患者や医療従事者の人権を擁護し、誹謗中傷など不当な差別を禁止しています。
また、千葉県流山市や愛知県半田市など9自治体の条例が議員提案であり、そのうち7条例が「議会の責務」を規定しています。愛知県豊橋市の「コロナ禍からみんなで豊橋のまちを守る条例」のようにネーミングに工夫を凝らしている自治体もあります。
昨年の早い時期に大学生や医療機関のクラスターを経験した京都市は、国や府と連携した様々な施策を推進し、7度にわたる補正予算を組んで、感染した方やご家族、医療機関や介護・児童施設、中小企業や文化芸術従事者、学生などへの支援を重ねてきました。しかしながら、戸惑いや不安を払拭できているとは言えません。
だからこそ、特措法が施行された今のこの段階で、市民ぐるみで困難を乗り越えるとの思いを目に見える形で示す、京都ならではの新型コロナ条例を検討してはいかがでしょうか。
市の施策推進と情報発信の充実を明記するほか、市民や事業者に感染防止の努力と人権擁護の促進に努めて頂くことを規定する条例となるよう、パブリックコメント等で広く意見を募集し、市民の声を結集することは大きな意義があると思います。
新型コロナ感染症対策に市民協働で取り組み、実効力を発揮する条例の制定に向け、幅広い世代の市民に協力を呼びかけていくべきと考えますがいかがでしょうか。ご答弁を求めます。
≪門川市長答弁≫(主旨)
市民ぐるみで新型コロナ感染防止を徹底し、スピード感を持って状況の変化に対応することは重要。条例についても、真剣に検討してまいりたい。

【コロナ禍の虐待問題】
次に、コロナ禍の虐待問題についてお伺いします。緊急事態宣言が発出された翌日の1月14日、公明党議員団は「第3次緊急要望」を提出させて頂きました。市民の皆様から寄せて頂いた声を精査して、緊急性のある重要な16項目を要望しましたが、その中に「家庭での虐待防止」は外せないと判断し、盛り込んだものです。
ここ数年、全国で児童虐待の痛ましい事件が報道されています。本市でも令和元年度の通告件数は2,693件、認定件数2,051件とのことで、6年前の約2倍の数値であり過去最多とお聞きしています。
また、最近では障がい者への虐待や高齢者虐待の事件も増えています。本市においても、高齢者虐待の認定件数は元年度479件、平成30年度474件と横ばいではありますが、25年度の315件と比べると1.5倍となっています。障害者虐待は施設内の暴行事件などが報道されているものの、実際は同居家族からの虐待が圧倒的に多いのが特徴です。
今、コロナ禍で社会的孤立が深刻化する中、これら虐待事案が増加しているのではないかと心配されています。担当者に聞くと、今年度の集計はできていないが、現時点では通告数は例年と変わらないとの報告でありました。しかし、私は児童虐待をはじめ家族からの虐待は「目に見えない」ものであり、アンテナを張り巡らせないと見過ごしてしまうと懸念しています。
現在、2回目の緊急事態宣言が発出され、在宅のリモートワークなどが増える状況にありますが、深刻なのは雇い止めなどで仕事をしたくてもできない方が少なくないことです。「ステイホーム」で外出できず、密閉された中で生活せざるを得ない状況が続き、お互いが気を遣っています。
誰もが疲れ、緊張の限界がきているのでないでしょうか。虐待を早期に発見し、スムーズな対応を進めるには、いち早く小さなサインに気づき、情報を共有して具体的行動を重ねるという、「連携と協働」の仕組みを確立し拡充することが大事だと思います。
同時に、保護者や介護者など虐待をしてしまう側への支援も重要です。現場の最前線として区役所や福祉事務所、はぐくみ室、児童相談所を核にした、地域ぐるみで「社会的孤立」を防止する活動が大事です。当事者や周囲の方に寄り添った経験から言えることは、揺れ動く心を理解し不安に寄り添ってくれる人たちの存在が極めて重要であるという事実です。
この数年で積み重ねられたノウハウに加え、コロナ禍の中での相談実績も重ねられて、各機関のスタッフや地域の皆さんも、問題意識を共有されています。ぜひ相互の連携を深め、検証を重ねて、きめ細かな血の通った「システム」を機能して頂きたい。
そこで提案します。児童虐待に限定せずに高齢者虐待や障がい者虐待のカテゴリーを「虐待」という括りで融合し、行政と地域の協働で 市民ぐるみの取り組みを加速するため、仮称「虐待対策プロジェクトチーム」の設置を検討してはどうでしょうか。
愛媛県や埼玉県、大阪府藤井寺市、千葉県松戸市など8つの自治体でトータルな虐待防止条例が施行されています。また、千葉県ふっつ(富津)市ではDVと虐待対策の総合的な基本計画を、平成31年3月に策定しました。本市でも参考になるのではないでしょうか。政府も今月19日に社会的孤立防止のため対策室を新設しました。
コロナ禍の虐待問題を継続的・総合的な視点で取り組む基本計画や条例を検討すると共に、全庁横断の虐待対策プロジェクトチームを組織するなど、心の通った市民ぐるみの活動を推進して頂きたい。いかがでしょうか。ご答弁を求めます。
≪村上副市長答弁≫(主旨)
コロナ禍で虐待の潜在化が懸念される中、わずかなサインを見逃さないため、市民ぐるみのネットワークを構築し、早期に適切な対応ができる取り組みを推進してまいりたい。
【新時代の学校教育】
最後に、令和新時代の学校教育についてお聞きします。コロナ禍にあって、学校現場は過去に例を見ない様々な困難に直面しました。学校再開後の授業の遅れを取り戻すリカバリー、部活動や各種行事の工夫など、言葉に尽くせない苦労の連続だったと思います。特に連日の感染拡大防止対策や、夏の熱中症対策は、未来に可能性を持つ青少年の生命を預かる、ギリギリの攻防戦であったと、心から敬意を表します。
そんな中、長期ビジョンで準備を進めてきた「GIGAスクール構想」は、子どもたちを誰ひとり取り残すことなく育成する教育環境のため、最先端のICT技術を活用した通信ネットワーク整備事業であり、公明党が国と地方の草の根ネットワークで実現に向けて尽力してきました。本市では今年度中に、総ての小中学校や総合支援学校の児童生徒に1人1台のタブレット端末を配備するとともに、校内ネットワークが高速大容量化されます。そして、来年度以降の本格活用に向け、52のモデル校でデジタルドリルの活用がスタートするなど、段階を踏まえた取り組みが重ねられているところです。
大阪府寝屋川市が全国に先駆けて導入したオンライン授業について、地元の議員さんにお聞きしたところ、新型コロナ感染を危惧する児童が登校せずに自宅で授業を受けるケースは、ほとんど無いものの、「選択肢」の存在が安心感を提供するという効果があったとのことでした。より重要なのは、不登校や長期入院の子どもへの「ライブ配信」が高く評価されている事実です。長年の懸案に対する大きな前進につながったと伺いました。研究に値する事例ではないでしょうか。
ICT技術を活用する最先端の教育を推進する上で課題となるのは、教員のスキル向上への支援だと思います。若手と比べて、ベテランの先生方が不安をお持ちだと推測します。
ICTの知識やスキルの向上に向けた教員へのきめ細かな支援が重要です。子どもたちのネットリテラシー教育も前進しなければなりません。先ほど申し上げた他都市の先行事例の研究も十分に行なったうえで、これらの充実を求めますがいかがでしょうか。
あわせて、少人数学級と教科担任制、部活動の3つの課題を取り上げたいと思います。いずれも、教員の負担を軽減する働き方改革という観点から注目されていますが、私は子どもたちの成長にとっても極めて大きな可能性を持つと考えています。
少人数学級については、公明党議員団が毎年の予算編成への要望で繰り返し求めていましたが、これに応えて本市では、平成15年度に小学1年生に導入した35人学級を翌年から2年生に拡大。19年度から中学3年生の30人学級を市単独で実施に踏み切っていました。今年1月、萩生田文部科学大臣は公明党の強い申し入れを受け止め、5年計画での「全小学校の35人学級実現」を正式に決定しました。今後のタイムテーブルに基づく着実な推進が求められます。
また、小学校の学級担任以外の教員が担当する専科指導は、本市では非常勤のスクールサポーターが全ての小学校で導入されています。常勤の専科指導教員は、72校で配置されていますが、先月の中教審で令和4年度を目途に高学年で本格的に導入すべきと答申されており、期待が高まっています。
部活動については、少子化による競技人口の減少を受け、学校単位の大会参加の在り方が見直されている中、顧問を担う教員の負担軽減が課題となっています。本市では市独自のガイドラインを作成し、部活動支援員の配置や外部コーチの派遣事業などを実施しており、今後もより一層、地域と連携した充実がカギとなると考えます。
新しい時代の重要課題である少人数学級と専科指導、部活動について、国の動向と連動した大胆かつ緻密な手を打って学校現場を活性化して頂きたい。京都の未来を拓く施策推進への決意と展望をお聞かせください。以上で私の質疑を終わります。ご清聴ありがとうございました。
≪在田教育長答弁≫(主旨)
来年度から、全校にGIGAスクール推進委員会を設置し、ICT環境を活用して様々な課題を掲げる子どもたちの実態に応じたきめ細かな教育を進めたい。少人数学級や部活動の実践研究を試行実施し、学校現場の活性化を充実してまいりたい。

新型コロナとの未曽有に長期戦にあって、追及や糾弾に終始しない建設的な質疑を展開し、前向きな答弁を勝ち取ることが出来ました。下記に質問原稿と答弁(主旨)を掲載させて頂きます。
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伏見区選出の吉田孝雄です。公明党京都市会議員団を代表し、大道義知・曽我修両先輩議員に続いて質疑をいたします。市長並びに理事者におかれましては、誠意あるご答弁をお願いいたします。
まず、新型コロナに感染した方やご家族に心よりお見舞い申し上げます。また、医療従事者や介護従事者の方をはじめ、総てのエッセンシャルワーカーの皆さんに敬意を表し、感謝申し上げます。
【人間中心の新しい社会「Society5.0」について】
最初に、人間中心の新しい社会「Society5.0」について提案いたします。これは、公明党京都市会議員団が毎年発表している政策提言の本年度のテーマでございまして、「新型コロナウイルス感染症を乗り越え、京都市の更なる発展を目指して」とのサブタイトルを付して、今月17日に門川市長に提出いたしました。
「Society 5.0」とは、平成28年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」で我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたコンセプトであり、現実の空間とクラウドなどのサイバー空間を高度に融合させたシステムによって、経済の発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を実現するというものです。
アメリカの未来学者アルビン・トフラーは、『第三の波』で人類の歴史は3つの技術革新の波によって発展したと解説しました。約1万5千年前の農業革命によって、第1の狩猟社会から第2の農耕社会へ、19世紀の産業革命によって第3の工業社会へ、そして戦後の脱産業化の第3の波による情報革命が高度情報化社会に発展させたというものです。
そして、21世紀。我が国が直面する様々な課題を克服する「新たな価値の創造」が時代の閉塞感を打ち破るキーワードであると位置づけ、人間中心の社会「Society5.0」のグランドデザインが打ち出されました。
コロナ禍で新しい生活様式への転換が模索される中、誰ひとり取り残さないSDGsの理念を基調とした経済や社会活動が重要となっています。人工知能やIoT、ビックデータなどをあらゆる産業や社会に取り入れることによって実現する未来社会では、AIの活用により必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動運転など最先端の技術で、少子高齢化、地方の過疎化などの課題を解決することにつながると考えられており、1人1人が希望を持って活躍し、世代を超えて互いに尊重し合あえる共生社会が展望されるのです。
私たち公明党議員団は、総ての市民が豊かな暮らしを実現する人間中心の新しい社会「Society5.0」の実現に向けた政策を提言するべく、国の基本計画や成長戦略、世界の先進事例を学んだほか、大学教授とのオンライン会議や若い研究者たちとのディスカッションを重ねてまいりました。
また、9月市会と11月市会で川嶋議員と平山議員がデジタル化推進を求める質疑を展開。デジタル化戦略監をトップとした全庁横断のプロジェクトチームの発足と職員採用などの体制整備など、着実な前進を後押ししてきました。
今回の提言は大きく4点あります。提言1では、誰ひとり取り残さない「Society5.0」のため情報弱者やデジタル弱者と言われる方への視点を忘れない意識改革と人材育成を、提言2では市民の暮らしに資するため、情報インフラの整備や申請主義から脱却するデジタル化の拡充、最新技術を駆使した高齢者支援や医療サービス、災害対策向上などを提案しました。
提言3は京都市の歴史的・文化的価値を未来に引き継ぐためのデータベース化とオープンデータ化の推進を提起し、提言4は京都の強みを活かした産官学の人材と技術のシェアリング、業種の垣根を超えた中小企業間のマッチングなどの具体策を提案しました。
財政危機と新型コロナという2つの極めて重大な危機に直面している今こそ、未来に希望の持てるビジョンに裏付けられた政策を力強く進め、市民の皆様との協働を加速していかなければなりません。今回のSociety5.0の実現に向けた提言で提案した政策を取り入れて、新たな価値を創造する持続可能なまちづくりに邁進して頂きたい。市長のご決意をお聞かせください。
≪門川市長答弁≫(主旨)
頂いた政策提言をすべて読み、大いに賛同した。今後10年を決する基本計画にも「Society5.0」を盛り込んでいる。具体的提言を1つ1つ政策に活かしてまいりたい。
【新型コロナウイルス感染症に関する法整備】
次に、新型コロナウイルス感染症に関する法整備についてお聞きします。2月3日、いわゆる改正特措法などコロナ関連法が可決成立しました。新型コロナ対策の実効性を高めるため、緊急事態宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を新設すると共に、営業時間短縮の命令や入院措置に応じない場合に過料を科す内容です。
公明党は、時短を求められる事業者に財政上の支援を義務付けた点と、国と自治体間での情報連携の義務化や宿泊・自宅療養の法的根拠を明確にしたことを評価し賛成しました。
苦渋の決断を余儀なくされる飲食店や周辺の事業者から深刻な声が寄せられ、市民の反応も賛否両論に分れています。私は、コロナとの戦いの正念場を迎えた今、責任の追及や糾弾に終始するのではなく、心を合わせて励まし合い、知恵を出し合っていく姿勢が大事だと思います。
この1年間、多くの自治体で、行政と市民、事業者がお互いの責務を果たし、感染拡大防止に協力する条例が制定されています。一般財団法人地方自治研究機構によると、新型コロナウイルス感染症に関する条例は本年2月9日時点で 東京都や千葉県、愛知県など都県が12条例、名古屋市と千葉市、2つの政令市を含む40の市町村条例、合わせて52条例が制定されました。
海水浴場のマナー向上を呼び掛ける神奈川県逗子市、観光客に協力を求める京丹後市や沖縄県石垣市など、地域の実情を反映した条例もありますが、ほとんどが市民ぐるみで協力する感染拡大防止を規定すると共に、感染症患者や医療従事者の人権を擁護し、誹謗中傷など不当な差別を禁止しています。
また、千葉県流山市や愛知県半田市など9自治体の条例が議員提案であり、そのうち7条例が「議会の責務」を規定しています。愛知県豊橋市の「コロナ禍からみんなで豊橋のまちを守る条例」のようにネーミングに工夫を凝らしている自治体もあります。
昨年の早い時期に大学生や医療機関のクラスターを経験した京都市は、国や府と連携した様々な施策を推進し、7度にわたる補正予算を組んで、感染した方やご家族、医療機関や介護・児童施設、中小企業や文化芸術従事者、学生などへの支援を重ねてきました。しかしながら、戸惑いや不安を払拭できているとは言えません。
だからこそ、特措法が施行された今のこの段階で、市民ぐるみで困難を乗り越えるとの思いを目に見える形で示す、京都ならではの新型コロナ条例を検討してはいかがでしょうか。
市の施策推進と情報発信の充実を明記するほか、市民や事業者に感染防止の努力と人権擁護の促進に努めて頂くことを規定する条例となるよう、パブリックコメント等で広く意見を募集し、市民の声を結集することは大きな意義があると思います。
新型コロナ感染症対策に市民協働で取り組み、実効力を発揮する条例の制定に向け、幅広い世代の市民に協力を呼びかけていくべきと考えますがいかがでしょうか。ご答弁を求めます。
≪門川市長答弁≫(主旨)
市民ぐるみで新型コロナ感染防止を徹底し、スピード感を持って状況の変化に対応することは重要。条例についても、真剣に検討してまいりたい。

【コロナ禍の虐待問題】
次に、コロナ禍の虐待問題についてお伺いします。緊急事態宣言が発出された翌日の1月14日、公明党議員団は「第3次緊急要望」を提出させて頂きました。市民の皆様から寄せて頂いた声を精査して、緊急性のある重要な16項目を要望しましたが、その中に「家庭での虐待防止」は外せないと判断し、盛り込んだものです。
ここ数年、全国で児童虐待の痛ましい事件が報道されています。本市でも令和元年度の通告件数は2,693件、認定件数2,051件とのことで、6年前の約2倍の数値であり過去最多とお聞きしています。
また、最近では障がい者への虐待や高齢者虐待の事件も増えています。本市においても、高齢者虐待の認定件数は元年度479件、平成30年度474件と横ばいではありますが、25年度の315件と比べると1.5倍となっています。障害者虐待は施設内の暴行事件などが報道されているものの、実際は同居家族からの虐待が圧倒的に多いのが特徴です。
今、コロナ禍で社会的孤立が深刻化する中、これら虐待事案が増加しているのではないかと心配されています。担当者に聞くと、今年度の集計はできていないが、現時点では通告数は例年と変わらないとの報告でありました。しかし、私は児童虐待をはじめ家族からの虐待は「目に見えない」ものであり、アンテナを張り巡らせないと見過ごしてしまうと懸念しています。
現在、2回目の緊急事態宣言が発出され、在宅のリモートワークなどが増える状況にありますが、深刻なのは雇い止めなどで仕事をしたくてもできない方が少なくないことです。「ステイホーム」で外出できず、密閉された中で生活せざるを得ない状況が続き、お互いが気を遣っています。
誰もが疲れ、緊張の限界がきているのでないでしょうか。虐待を早期に発見し、スムーズな対応を進めるには、いち早く小さなサインに気づき、情報を共有して具体的行動を重ねるという、「連携と協働」の仕組みを確立し拡充することが大事だと思います。
同時に、保護者や介護者など虐待をしてしまう側への支援も重要です。現場の最前線として区役所や福祉事務所、はぐくみ室、児童相談所を核にした、地域ぐるみで「社会的孤立」を防止する活動が大事です。当事者や周囲の方に寄り添った経験から言えることは、揺れ動く心を理解し不安に寄り添ってくれる人たちの存在が極めて重要であるという事実です。
この数年で積み重ねられたノウハウに加え、コロナ禍の中での相談実績も重ねられて、各機関のスタッフや地域の皆さんも、問題意識を共有されています。ぜひ相互の連携を深め、検証を重ねて、きめ細かな血の通った「システム」を機能して頂きたい。
そこで提案します。児童虐待に限定せずに高齢者虐待や障がい者虐待のカテゴリーを「虐待」という括りで融合し、行政と地域の協働で 市民ぐるみの取り組みを加速するため、仮称「虐待対策プロジェクトチーム」の設置を検討してはどうでしょうか。
愛媛県や埼玉県、大阪府藤井寺市、千葉県松戸市など8つの自治体でトータルな虐待防止条例が施行されています。また、千葉県ふっつ(富津)市ではDVと虐待対策の総合的な基本計画を、平成31年3月に策定しました。本市でも参考になるのではないでしょうか。政府も今月19日に社会的孤立防止のため対策室を新設しました。
コロナ禍の虐待問題を継続的・総合的な視点で取り組む基本計画や条例を検討すると共に、全庁横断の虐待対策プロジェクトチームを組織するなど、心の通った市民ぐるみの活動を推進して頂きたい。いかがでしょうか。ご答弁を求めます。
≪村上副市長答弁≫(主旨)
コロナ禍で虐待の潜在化が懸念される中、わずかなサインを見逃さないため、市民ぐるみのネットワークを構築し、早期に適切な対応ができる取り組みを推進してまいりたい。
【新時代の学校教育】
最後に、令和新時代の学校教育についてお聞きします。コロナ禍にあって、学校現場は過去に例を見ない様々な困難に直面しました。学校再開後の授業の遅れを取り戻すリカバリー、部活動や各種行事の工夫など、言葉に尽くせない苦労の連続だったと思います。特に連日の感染拡大防止対策や、夏の熱中症対策は、未来に可能性を持つ青少年の生命を預かる、ギリギリの攻防戦であったと、心から敬意を表します。
そんな中、長期ビジョンで準備を進めてきた「GIGAスクール構想」は、子どもたちを誰ひとり取り残すことなく育成する教育環境のため、最先端のICT技術を活用した通信ネットワーク整備事業であり、公明党が国と地方の草の根ネットワークで実現に向けて尽力してきました。本市では今年度中に、総ての小中学校や総合支援学校の児童生徒に1人1台のタブレット端末を配備するとともに、校内ネットワークが高速大容量化されます。そして、来年度以降の本格活用に向け、52のモデル校でデジタルドリルの活用がスタートするなど、段階を踏まえた取り組みが重ねられているところです。
大阪府寝屋川市が全国に先駆けて導入したオンライン授業について、地元の議員さんにお聞きしたところ、新型コロナ感染を危惧する児童が登校せずに自宅で授業を受けるケースは、ほとんど無いものの、「選択肢」の存在が安心感を提供するという効果があったとのことでした。より重要なのは、不登校や長期入院の子どもへの「ライブ配信」が高く評価されている事実です。長年の懸案に対する大きな前進につながったと伺いました。研究に値する事例ではないでしょうか。
ICT技術を活用する最先端の教育を推進する上で課題となるのは、教員のスキル向上への支援だと思います。若手と比べて、ベテランの先生方が不安をお持ちだと推測します。
ICTの知識やスキルの向上に向けた教員へのきめ細かな支援が重要です。子どもたちのネットリテラシー教育も前進しなければなりません。先ほど申し上げた他都市の先行事例の研究も十分に行なったうえで、これらの充実を求めますがいかがでしょうか。
あわせて、少人数学級と教科担任制、部活動の3つの課題を取り上げたいと思います。いずれも、教員の負担を軽減する働き方改革という観点から注目されていますが、私は子どもたちの成長にとっても極めて大きな可能性を持つと考えています。
少人数学級については、公明党議員団が毎年の予算編成への要望で繰り返し求めていましたが、これに応えて本市では、平成15年度に小学1年生に導入した35人学級を翌年から2年生に拡大。19年度から中学3年生の30人学級を市単独で実施に踏み切っていました。今年1月、萩生田文部科学大臣は公明党の強い申し入れを受け止め、5年計画での「全小学校の35人学級実現」を正式に決定しました。今後のタイムテーブルに基づく着実な推進が求められます。
また、小学校の学級担任以外の教員が担当する専科指導は、本市では非常勤のスクールサポーターが全ての小学校で導入されています。常勤の専科指導教員は、72校で配置されていますが、先月の中教審で令和4年度を目途に高学年で本格的に導入すべきと答申されており、期待が高まっています。
部活動については、少子化による競技人口の減少を受け、学校単位の大会参加の在り方が見直されている中、顧問を担う教員の負担軽減が課題となっています。本市では市独自のガイドラインを作成し、部活動支援員の配置や外部コーチの派遣事業などを実施しており、今後もより一層、地域と連携した充実がカギとなると考えます。
新しい時代の重要課題である少人数学級と専科指導、部活動について、国の動向と連動した大胆かつ緻密な手を打って学校現場を活性化して頂きたい。京都の未来を拓く施策推進への決意と展望をお聞かせください。以上で私の質疑を終わります。ご清聴ありがとうございました。
≪在田教育長答弁≫(主旨)
来年度から、全校にGIGAスクール推進委員会を設置し、ICT環境を活用して様々な課題を掲げる子どもたちの実態に応じたきめ細かな教育を進めたい。少人数学級や部活動の実践研究を試行実施し、学校現場の活性化を充実してまいりたい。
2021.01.16 (Sat)
京都市では、市内中心部と比べて山科区・伏見区・西京区など周辺部は市バス系統が少なく「交通不便地域」と呼ばれています。伏見区の醍醐地域(醍醐・石田・日野・小栗栖)ではコミュニティバスが定着していますが、それ以外の地域では高齢化に伴う「足の確保」問題が喫緊の課題となっています。
私の地元・桃山地域でも、駅や商業施設への移動が困難になった高齢者から「醍醐のような交通機関が導入できないか」との切実な声が寄せられていますが、種々の検討を重ねているものの、結論がなかなか出ない状況です。コミュニティバスを導入しても経営が成り立たずに破たんすれば、もっと大変な事態になるからです。

私は、多くの方々との意見交換を通して、議会の場で何年もかけて質疑を重ねてきました。ちょうど1年少し前の2019年12月の本会議代表質問で、「桃山南地域のバス路線変更」の検討を要望するとともに、長期ビジョンに立脚した福祉施策を提案しました。
その折に市長・副市長から「次期高齢者支援計画に盛り込みます」との答弁がありました。このたび取りまとめられた「京都市長寿すこやかプラン第8期」に新規事業として「介護施設の送迎バスを高齢者移動支援に活用する」施策が盛り込まれ、正式に今後の指標となりました。本当に良かったです。
1月からパブリックコメントも募集されています。ぜひ市民の生の声を寄せて頂きたいと存じます。尚、下記に本会議代表質問の模様を抜粋して紹介します。
*************************************************
2019年11月市会本会議代表質問
12月4日
(略)
【高齢者など交通弱者の移動支援】
最後に、高齢者など交通弱者と言われる方々の移動支援についてお聞きします。私は平成22年11月市会本会議代表質問で地域公共交通の在り方を問題提起し、その後も本会議や委員会で積極的な議論を重ねてきました。
高齢化の進展で、交通弱者の移動支援は極めて重要な課題となっています。醍醐地域はいち早くこの問題に取り組み、コミュニティバスを開業。本年15周年を迎え、乗客800万人を突破する記念イベントが開かれるなど軌道に乗っています。関係者のご尽力に敬意を表します。隣接する桃山地域でも「醍醐のようにできないか」との声が早くから上がっていますが、規模的に採算面で困難であり実現への動きに至っていません。
桃山地域の公共交通問題を、9月市会で同じ伏見区選出の2人の議員も取り上げられました。会派を超えて問題意識を共有しているのです。それほど切実であることを市長も認識していただきたいと申し上げるものでございます。
また、9月市会で提案された「高齢者の安全運転支援と移動手段の確保を求める意見書」でも、「高齢者が日々の買物や通院などに困らないよう、コミュニティバスやデマンド型乗合タクシーの導入など、地域公共交通ネットワークの更なる充実を図ること」と論じており、全会一致で採択され国に送られたところであります。
本年3月の予算委員会と10月の決算委員会で、私は桃山南学区に居住される方が高齢化に伴って駅まで歩く時間が倍増し困っている点を取り上げ、現在運行している京阪バスの「経路変更」を要望しました。
同じ京阪バスで山科区の小金塚と鏡山という2つの地域において新路線や増便などの実証実験も行われています。また、上京区では過去にデマンドバス運行実験など意欲的に取り組んだ経緯がありましたが、トータルな判断で市バスの経路変更を実施。大変に喜ばれています。ぜひ、桃山南学区のバス路線経路変更の実証実験に向け本格的に協議していただきたい。まずこの点を強く求めておきます。
高齢者の移動手段をいかに確保するかという課題は、山間地域や周辺地域だけでなく市街地中心地域でも深刻化することは、私が上京区で活動していた当時から重要な懸案でありました。10月の本会議でも鈴木副市長が「高齢者の方にとって最寄りの駅やバス停までの移動、すなわちラスト・ワンマイルへの支援が求められている」との認識を示しておられます。全市的な地域公共交通ネットワークへのビジョンを明確にして、実現に向けて具体策を検討することは待ったなしの課題であると申し上げるものです。
ただし、他都市で実施されている「ライドシェア」を分析しますと、大型タクシーのワゴン型タイプで乗り合いするスタイルでは、なかなか採算が合わず行政支援が際限なく膨れ上がってしまう懸念が大きく、多くの自治体が二の足を踏んでいる状況であり、厳しい現実があります。
そこで、発想を転換し、現在の「介護予防日常生活支援総合事業」の仕組みを拡充して、高齢者の移動支援に生かせないかと提案させていただきたい。国のガイドラインによると、この総合事業サービスの1つとして、要支援者の移動支援や、その前後の生活支援を行う事例が示されています。本市がこのサービス類型を新たに設けることによって、要支援の高齢者が介護事業者の送迎車両に乗って買い物や医療機関などに立ち寄ることができるようになるのです。
全く新しい仕組みを一から立ち上げるのは大変ですが、この介護予防日常生活支援総合事業を生かすものであれば、実現に向けて大きな可能性があるものと考えます。本市でも、地域に根を張る介護サービス事業者が高齢者の移動支援に取り組む仕組みを構築し、積極的に支援するべきと考えますが、いかがでしょうか。以上で私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
≪村上副市長答弁(主旨)≫
高齢者の移動や外出を支援することは重要と認識。ご提案の「総合事業の訪問型サービス」拡大は、他都市でも導入されている。高齢化進展を重視し、来年度策定の「第8次長寿すこやかプラン」に合わせ検討してまいりたい。
私の地元・桃山地域でも、駅や商業施設への移動が困難になった高齢者から「醍醐のような交通機関が導入できないか」との切実な声が寄せられていますが、種々の検討を重ねているものの、結論がなかなか出ない状況です。コミュニティバスを導入しても経営が成り立たずに破たんすれば、もっと大変な事態になるからです。

私は、多くの方々との意見交換を通して、議会の場で何年もかけて質疑を重ねてきました。ちょうど1年少し前の2019年12月の本会議代表質問で、「桃山南地域のバス路線変更」の検討を要望するとともに、長期ビジョンに立脚した福祉施策を提案しました。
その折に市長・副市長から「次期高齢者支援計画に盛り込みます」との答弁がありました。このたび取りまとめられた「京都市長寿すこやかプラン第8期」に新規事業として「介護施設の送迎バスを高齢者移動支援に活用する」施策が盛り込まれ、正式に今後の指標となりました。本当に良かったです。
1月からパブリックコメントも募集されています。ぜひ市民の生の声を寄せて頂きたいと存じます。尚、下記に本会議代表質問の模様を抜粋して紹介します。
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2019年11月市会本会議代表質問
12月4日
(略)
【高齢者など交通弱者の移動支援】
最後に、高齢者など交通弱者と言われる方々の移動支援についてお聞きします。私は平成22年11月市会本会議代表質問で地域公共交通の在り方を問題提起し、その後も本会議や委員会で積極的な議論を重ねてきました。
高齢化の進展で、交通弱者の移動支援は極めて重要な課題となっています。醍醐地域はいち早くこの問題に取り組み、コミュニティバスを開業。本年15周年を迎え、乗客800万人を突破する記念イベントが開かれるなど軌道に乗っています。関係者のご尽力に敬意を表します。隣接する桃山地域でも「醍醐のようにできないか」との声が早くから上がっていますが、規模的に採算面で困難であり実現への動きに至っていません。
桃山地域の公共交通問題を、9月市会で同じ伏見区選出の2人の議員も取り上げられました。会派を超えて問題意識を共有しているのです。それほど切実であることを市長も認識していただきたいと申し上げるものでございます。
また、9月市会で提案された「高齢者の安全運転支援と移動手段の確保を求める意見書」でも、「高齢者が日々の買物や通院などに困らないよう、コミュニティバスやデマンド型乗合タクシーの導入など、地域公共交通ネットワークの更なる充実を図ること」と論じており、全会一致で採択され国に送られたところであります。
本年3月の予算委員会と10月の決算委員会で、私は桃山南学区に居住される方が高齢化に伴って駅まで歩く時間が倍増し困っている点を取り上げ、現在運行している京阪バスの「経路変更」を要望しました。
同じ京阪バスで山科区の小金塚と鏡山という2つの地域において新路線や増便などの実証実験も行われています。また、上京区では過去にデマンドバス運行実験など意欲的に取り組んだ経緯がありましたが、トータルな判断で市バスの経路変更を実施。大変に喜ばれています。ぜひ、桃山南学区のバス路線経路変更の実証実験に向け本格的に協議していただきたい。まずこの点を強く求めておきます。
高齢者の移動手段をいかに確保するかという課題は、山間地域や周辺地域だけでなく市街地中心地域でも深刻化することは、私が上京区で活動していた当時から重要な懸案でありました。10月の本会議でも鈴木副市長が「高齢者の方にとって最寄りの駅やバス停までの移動、すなわちラスト・ワンマイルへの支援が求められている」との認識を示しておられます。全市的な地域公共交通ネットワークへのビジョンを明確にして、実現に向けて具体策を検討することは待ったなしの課題であると申し上げるものです。
ただし、他都市で実施されている「ライドシェア」を分析しますと、大型タクシーのワゴン型タイプで乗り合いするスタイルでは、なかなか採算が合わず行政支援が際限なく膨れ上がってしまう懸念が大きく、多くの自治体が二の足を踏んでいる状況であり、厳しい現実があります。
そこで、発想を転換し、現在の「介護予防日常生活支援総合事業」の仕組みを拡充して、高齢者の移動支援に生かせないかと提案させていただきたい。国のガイドラインによると、この総合事業サービスの1つとして、要支援者の移動支援や、その前後の生活支援を行う事例が示されています。本市がこのサービス類型を新たに設けることによって、要支援の高齢者が介護事業者の送迎車両に乗って買い物や医療機関などに立ち寄ることができるようになるのです。
全く新しい仕組みを一から立ち上げるのは大変ですが、この介護予防日常生活支援総合事業を生かすものであれば、実現に向けて大きな可能性があるものと考えます。本市でも、地域に根を張る介護サービス事業者が高齢者の移動支援に取り組む仕組みを構築し、積極的に支援するべきと考えますが、いかがでしょうか。以上で私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
≪村上副市長答弁(主旨)≫
高齢者の移動や外出を支援することは重要と認識。ご提案の「総合事業の訪問型サービス」拡大は、他都市でも導入されている。高齢化進展を重視し、来年度策定の「第8次長寿すこやかプラン」に合わせ検討してまいりたい。
2021.01.04 (Mon)
3.ミマキイリヒコ(崇神天皇)
九州から東征し、ヤマト(大和)に王権を開いたカムヤマトイワレヒコ(神武)から10代目の大王であるミマキイリヒコ(崇神)は、記紀をはじめ我が国の歴史書において時代を画する多大な業績を挙げたと伝えられている。
1つは、疫病で国民の過半が失われる試練を克服したこと。2つは、王権の危機ともいえる強大な反乱を鎮圧したこと。3つは、いわゆる「四道将軍」を北陸道・東海道・山陽道・山陰道に派遣したこと。4つ目は出雲国を平定し勢力下に置いたこと。5つ目は戸口調査で農業を振興し「御肇国天皇(はつくにしらすすめらみこと)」と称えられたこと。6つ目は灌漑など大型の事業に成功し国家の安定に尽力したこと。そして7つ目には任那や新羅との交流が始まったとされる点である。
記紀では、2代から9代までの大王の事跡に関する記述がほとんど無く、特に日本書記では第7巻に一括で収録されている(いわうる欠史八代)ことを踏まえると、第8巻に記載された崇神に多くの偉大な業績が集中していることに対して、近代合理主義的観点から疑いの目を向けられ、非実在説が主流になっている。神武と同じ称号(ハツクニシラス)を捧げられたことも、その根拠となっている。しかし、文献学的および考古学的に検証した結果として、全くの虚像(フィクション)と決めつけるのは妥当ではなく、長い年月の風雪に耐えて伝承されていた実像(歴史的事実)の痕跡が垣間見えるのではないか。この点を考察したい。
【考察1】血統
伝承として神武から10代目の大王と記憶されていた。ヒコクニオシヒト(6代孝安)から書記が編纂された当時の朝廷に仕える豪族の遠祖が登場するが、これは以降の直系や傍系の王子の名前に「ヒコ〇〇」と付くことからも信憑するに足ると思われる。同時に、吉備氏や毛野氏などの地方王権や和珥氏、丹波道主などの朝廷と連携した主要豪族の系図を皇統に組み込んだ痕跡と推察される。(ただし、代数や名前は正確ではなく後世に造作されたものであることは、多くの歴史家の洞察の通りと思われる)
ヒコオオビビ(9代開化)の嫡子である崇神は、畿内北部に広大な勢力を持つ息長氏の祖ヒコイマス(彦坐)の異母兄弟であり、同時に蘇我氏などの祖である武内宿禰の祖父ヒコフツオシノマコト(彦太忍信)の異父兄と伝承される。この時代までの先行豪族勢力の血統を集約するとともに、のちの時代に活躍する豪族の元祖的存在と位置付けられている。息長氏はオキナガタラシヒメ(神功皇后)の出自であり、その権力を支えた長寿の臣下が武内宿禰である。
【考察2】疫病
即位5年目に疫病が流行して人口の半ばが失われるパンデミックに直面。2年後に、ヒコクニクル(8代孝元)の妹ヤマトトトヒモモソヒメ(倭迹迹日百襲姫)に大物主神が憑依して託宣され、そのとおりに対策を打って疫病が終息し五穀豊穣となった。百襲姫を祀る箸墓古墳は最古の前方後円墳で、最新の考古学知見では3世紀中半~4世紀初頭の頃と推定される(魏志倭人伝の卑弥呼とほぼ同時期)。したがって、その2世代後の崇神は4世紀初期から中期頃の治世と推定される。
邪馬台国畿内説に立てば、神を祀る巫女である百襲姫が女王卑弥呼に比定されるが、この前の70~80年間の「倭国大乱」が記紀には全く描かれていない(欠史八代)のが弱点である。また、纏向遺跡が倭人伝に詳しく記載されている「環濠集落」ではないことも大きい。崇神の2代後の景行時代から本格化する「熊襲征伐」伝承や6世紀の「磐井の乱」に比定される古墳の発掘成果を分析すると、邪馬台国九州説の可能性が高いのではないだろうか。
【考察3】四道将軍
即位10年、四道将軍を派遣したと伝わる。大彦命(9代ヒコオオビビ=開化の第1皇子)を北陸道に、武渟川別(大彦の息子で阿倍氏の祖)を東海道に、吉備津彦(7代ヒコフトニ=孝霊の皇子とされる)を西道(山陽道)に、丹波道主(開化の皇子とされる彦坐の子)を山陰道に将軍として遣わした。その直前、タケハニヤスビコ(武埴安彦=8代孝元の皇子)が謀反。北方の山背(京都府)と西方の大坂から都を挟撃されるも、吉備津彦命と大彦命、ヒコクニブク(彦国葺=和珥氏の祖)の活躍で叛乱は終息。四道将軍は翌年に戎夷を従わせたという。
これほど早期に成功した要因は、四道将軍の派遣が軍事侵攻ではなく、疫病に苦しむ地方を救援するための「応援部隊」だったからであると推定したい。重病者の救護や隔離、軽症者の治療や介護、食糧など生活必需品の提供、荒廃した村落の復旧作業(消毒・耕作地整理など)や労働力補充を含めた、多角的な救援活動を展開して、本州の各地域の立て直しに貢献した。このことが倭国統一への足掛かりを構築したと後世の歴史書(記紀以前の国記・天皇記や帝紀・旧辞などを含む)で綴られたのではないだろうか。
【考察4】「御肇国天皇(はつくにしらすすめらみこと)」の称号
疫病や反乱という危機的状況を克服した倭王権に各地の王権が心服し、吉備や丹波などを含む連合王権の盟主となった。吉備津彦や丹波道主などが皇統に組み込まれたのは、血族の盃のような盟約を交わした痕跡なのかもしれない。その後、戸口を調査して初めて課役を科す事業を成就するとともに、大規模な灌漑事業を行って農業を振興した。これらの業績で「御肇国天皇(はつくにしらすすめらみこと)」と称えられたと伝わる。九州や出雲という並列する王権を圧倒する実力を名実ともに身につけた治世であった。
なお、倭国よりも中国に近接している韓半島では、魏志韓伝で馬韓と辰韓と呼ばれた地域がそれぞれ統一されて、その後の正史で百済と新羅という王朝国家が成立している。この地殻変動と軌を同じくして、崇神が率いる倭王権の統一事業も4世紀半ばに本格化したと思われる。
【考察5】出雲平定
武埴安彦との戦いや四道将軍の活躍で勢力を拡大した倭王権は、素戔嗚時代から文明伝播の象徴であり内政と外交をリードしてきた出雲に謀略を仕掛ける。新宝を献上させる命を下し、これに対する出雲振根(いずものふるね)と弟の飯入根(いいいりね)の紛争への介入を口実に、吉備ら近在の勢力と合力して武力侵攻。長年の国家的課題であった旧宗主国出雲を完全に支配下に置くことに成功した。覇者交代を象徴する大事件であり、天孫族の直系たる九州倭国(ヤマトからは熊襲と蔑称される)を侵攻する決意を固める契機となった。
後世から「熊襲征伐」と呼ばれる九州侵攻は、崇神の孫オオタラシヒコ(12代景行)からヤマトタケル(日本武尊)を経て、その子タラシナカツヒコ(14代仲哀)までの3世代にわたる長期戦であり、仲哀が討ち死にしていることからも相当な乱戦であったと推定される。
【考察6】韓半島と本格外交
出雲平定の成果として韓半島との本格外交が始まった。任那が使者として遣わしてきた蘇那曷叱知(そなかしち)は崇神大王の死後も在日し、次のイクメイリヒコ(11代垂仁)の即位2年に任那へ帰国したが、その際に倭国からの交易品を新羅に奪われたといい、任那と新羅の抗争はここから始まると記述されている。
垂仁期の記述には帰国の際に垂仁が任那の国名を父ミマキイリヒコの名に因んで命名したとの説や、新羅から渡来したアマノヒボコ(天日槍)の末裔タジマモリの常世国のエピソードが収録されている。古代の大きな転換期にヤマトを治めた神功皇后という偉大な指導者(かつ巫女)の系譜を組み込んだ影響と考察したい。
神功皇后の摂政としての治世と、その後継ホンダワケ(15代応神)が君臨した時代は、おそらく任那の鉄を守るために韓半島で激化した戦乱に本格介入した「三韓征伐」に適合する。この戦争は、金石文として史料価値の高い「好太王碑」において、倭国が391年に百済や任那に軍事侵攻して従属させたが、高句麗が激戦の末に打ち破って404年に撤退させたと謳いあげられている。
河内に世界最大規模の王墓(応神天皇陵や仁徳天皇陵)を築いた応神の権力掌握の経緯や、曽孫にあたるワカタケル(21代雄略)の絶頂期と急激な衰退、越の国から応神5世の孫の名目で乗り込んで輿入れしたヲオド(26代継体)の列島を横断する壮大な興亡については、研鑽を深める時間を確保して取りまとめて、『続・倭国大王列伝』として後日に掲載したい。ご了承をお願いする次第である。
九州から東征し、ヤマト(大和)に王権を開いたカムヤマトイワレヒコ(神武)から10代目の大王であるミマキイリヒコ(崇神)は、記紀をはじめ我が国の歴史書において時代を画する多大な業績を挙げたと伝えられている。
1つは、疫病で国民の過半が失われる試練を克服したこと。2つは、王権の危機ともいえる強大な反乱を鎮圧したこと。3つは、いわゆる「四道将軍」を北陸道・東海道・山陽道・山陰道に派遣したこと。4つ目は出雲国を平定し勢力下に置いたこと。5つ目は戸口調査で農業を振興し「御肇国天皇(はつくにしらすすめらみこと)」と称えられたこと。6つ目は灌漑など大型の事業に成功し国家の安定に尽力したこと。そして7つ目には任那や新羅との交流が始まったとされる点である。
記紀では、2代から9代までの大王の事跡に関する記述がほとんど無く、特に日本書記では第7巻に一括で収録されている(いわうる欠史八代)ことを踏まえると、第8巻に記載された崇神に多くの偉大な業績が集中していることに対して、近代合理主義的観点から疑いの目を向けられ、非実在説が主流になっている。神武と同じ称号(ハツクニシラス)を捧げられたことも、その根拠となっている。しかし、文献学的および考古学的に検証した結果として、全くの虚像(フィクション)と決めつけるのは妥当ではなく、長い年月の風雪に耐えて伝承されていた実像(歴史的事実)の痕跡が垣間見えるのではないか。この点を考察したい。
【考察1】血統
伝承として神武から10代目の大王と記憶されていた。ヒコクニオシヒト(6代孝安)から書記が編纂された当時の朝廷に仕える豪族の遠祖が登場するが、これは以降の直系や傍系の王子の名前に「ヒコ〇〇」と付くことからも信憑するに足ると思われる。同時に、吉備氏や毛野氏などの地方王権や和珥氏、丹波道主などの朝廷と連携した主要豪族の系図を皇統に組み込んだ痕跡と推察される。(ただし、代数や名前は正確ではなく後世に造作されたものであることは、多くの歴史家の洞察の通りと思われる)
ヒコオオビビ(9代開化)の嫡子である崇神は、畿内北部に広大な勢力を持つ息長氏の祖ヒコイマス(彦坐)の異母兄弟であり、同時に蘇我氏などの祖である武内宿禰の祖父ヒコフツオシノマコト(彦太忍信)の異父兄と伝承される。この時代までの先行豪族勢力の血統を集約するとともに、のちの時代に活躍する豪族の元祖的存在と位置付けられている。息長氏はオキナガタラシヒメ(神功皇后)の出自であり、その権力を支えた長寿の臣下が武内宿禰である。
【考察2】疫病
即位5年目に疫病が流行して人口の半ばが失われるパンデミックに直面。2年後に、ヒコクニクル(8代孝元)の妹ヤマトトトヒモモソヒメ(倭迹迹日百襲姫)に大物主神が憑依して託宣され、そのとおりに対策を打って疫病が終息し五穀豊穣となった。百襲姫を祀る箸墓古墳は最古の前方後円墳で、最新の考古学知見では3世紀中半~4世紀初頭の頃と推定される(魏志倭人伝の卑弥呼とほぼ同時期)。したがって、その2世代後の崇神は4世紀初期から中期頃の治世と推定される。
邪馬台国畿内説に立てば、神を祀る巫女である百襲姫が女王卑弥呼に比定されるが、この前の70~80年間の「倭国大乱」が記紀には全く描かれていない(欠史八代)のが弱点である。また、纏向遺跡が倭人伝に詳しく記載されている「環濠集落」ではないことも大きい。崇神の2代後の景行時代から本格化する「熊襲征伐」伝承や6世紀の「磐井の乱」に比定される古墳の発掘成果を分析すると、邪馬台国九州説の可能性が高いのではないだろうか。
【考察3】四道将軍
即位10年、四道将軍を派遣したと伝わる。大彦命(9代ヒコオオビビ=開化の第1皇子)を北陸道に、武渟川別(大彦の息子で阿倍氏の祖)を東海道に、吉備津彦(7代ヒコフトニ=孝霊の皇子とされる)を西道(山陽道)に、丹波道主(開化の皇子とされる彦坐の子)を山陰道に将軍として遣わした。その直前、タケハニヤスビコ(武埴安彦=8代孝元の皇子)が謀反。北方の山背(京都府)と西方の大坂から都を挟撃されるも、吉備津彦命と大彦命、ヒコクニブク(彦国葺=和珥氏の祖)の活躍で叛乱は終息。四道将軍は翌年に戎夷を従わせたという。
これほど早期に成功した要因は、四道将軍の派遣が軍事侵攻ではなく、疫病に苦しむ地方を救援するための「応援部隊」だったからであると推定したい。重病者の救護や隔離、軽症者の治療や介護、食糧など生活必需品の提供、荒廃した村落の復旧作業(消毒・耕作地整理など)や労働力補充を含めた、多角的な救援活動を展開して、本州の各地域の立て直しに貢献した。このことが倭国統一への足掛かりを構築したと後世の歴史書(記紀以前の国記・天皇記や帝紀・旧辞などを含む)で綴られたのではないだろうか。
【考察4】「御肇国天皇(はつくにしらすすめらみこと)」の称号
疫病や反乱という危機的状況を克服した倭王権に各地の王権が心服し、吉備や丹波などを含む連合王権の盟主となった。吉備津彦や丹波道主などが皇統に組み込まれたのは、血族の盃のような盟約を交わした痕跡なのかもしれない。その後、戸口を調査して初めて課役を科す事業を成就するとともに、大規模な灌漑事業を行って農業を振興した。これらの業績で「御肇国天皇(はつくにしらすすめらみこと)」と称えられたと伝わる。九州や出雲という並列する王権を圧倒する実力を名実ともに身につけた治世であった。
なお、倭国よりも中国に近接している韓半島では、魏志韓伝で馬韓と辰韓と呼ばれた地域がそれぞれ統一されて、その後の正史で百済と新羅という王朝国家が成立している。この地殻変動と軌を同じくして、崇神が率いる倭王権の統一事業も4世紀半ばに本格化したと思われる。
【考察5】出雲平定
武埴安彦との戦いや四道将軍の活躍で勢力を拡大した倭王権は、素戔嗚時代から文明伝播の象徴であり内政と外交をリードしてきた出雲に謀略を仕掛ける。新宝を献上させる命を下し、これに対する出雲振根(いずものふるね)と弟の飯入根(いいいりね)の紛争への介入を口実に、吉備ら近在の勢力と合力して武力侵攻。長年の国家的課題であった旧宗主国出雲を完全に支配下に置くことに成功した。覇者交代を象徴する大事件であり、天孫族の直系たる九州倭国(ヤマトからは熊襲と蔑称される)を侵攻する決意を固める契機となった。
後世から「熊襲征伐」と呼ばれる九州侵攻は、崇神の孫オオタラシヒコ(12代景行)からヤマトタケル(日本武尊)を経て、その子タラシナカツヒコ(14代仲哀)までの3世代にわたる長期戦であり、仲哀が討ち死にしていることからも相当な乱戦であったと推定される。
【考察6】韓半島と本格外交
出雲平定の成果として韓半島との本格外交が始まった。任那が使者として遣わしてきた蘇那曷叱知(そなかしち)は崇神大王の死後も在日し、次のイクメイリヒコ(11代垂仁)の即位2年に任那へ帰国したが、その際に倭国からの交易品を新羅に奪われたといい、任那と新羅の抗争はここから始まると記述されている。
垂仁期の記述には帰国の際に垂仁が任那の国名を父ミマキイリヒコの名に因んで命名したとの説や、新羅から渡来したアマノヒボコ(天日槍)の末裔タジマモリの常世国のエピソードが収録されている。古代の大きな転換期にヤマトを治めた神功皇后という偉大な指導者(かつ巫女)の系譜を組み込んだ影響と考察したい。
神功皇后の摂政としての治世と、その後継ホンダワケ(15代応神)が君臨した時代は、おそらく任那の鉄を守るために韓半島で激化した戦乱に本格介入した「三韓征伐」に適合する。この戦争は、金石文として史料価値の高い「好太王碑」において、倭国が391年に百済や任那に軍事侵攻して従属させたが、高句麗が激戦の末に打ち破って404年に撤退させたと謳いあげられている。
河内に世界最大規模の王墓(応神天皇陵や仁徳天皇陵)を築いた応神の権力掌握の経緯や、曽孫にあたるワカタケル(21代雄略)の絶頂期と急激な衰退、越の国から応神5世の孫の名目で乗り込んで輿入れしたヲオド(26代継体)の列島を横断する壮大な興亡については、研鑽を深める時間を確保して取りまとめて、『続・倭国大王列伝』として後日に掲載したい。ご了承をお願いする次第である。